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自家薬籠中の物

私の好きなこの故事成語は「自分の薬箱の中にある薬のように、自分の思うままに使える物」と言う意味で我々内科系の医者の為にある様な言葉だと思います。

自分が良いと思った薬を使ってみて量を増やしたり、量が多いと思ったら逆に減らしたり、合わないと思ったら止めて他に移ったり、毎日がその繰り返しである。薬の種類と量がピタッと合って、症状が急に良くなると「技が決まった」という感じがして私も嬉しくなり患者さんにも笑顔が見られる瞬間が生じる。臨床をやっていて、やりがいを感じる時である。自分の意のままに使える薬の数はそれほど多くなくとも、薬箱の中の宝物とも言える薬を徐々に増やして行きたいと思っています。

処方とは不思議なもので、同じ病気でも医者によって処方薬が全く違うことが多く、その人の考え方を反映します。紹介状などで前医の処方を見るだけでも、その人の実力が分かります。

精神科の薬も年々新しい物が出て来ていますが、少しずつ試しながら自分の薬箱に入れ、一方では「温故知新」の精神で古くからある漢方薬の中の得意な薬も薬箱に入れ、双方の長所を生かしながら上手に組み合わせて行くことが「術」として重要であると思います。