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脳腸相関

昔から我が国でも常用語となっている「腹が立つ」などの言葉でもわかる様に、腹は「肚」とも書かれ精神状態と消化器系との密接な関係は知られて来ました。英語でも「ガッツ」という内臓、はらわたを示す言葉は、精神的パワーを現す「肝っ玉・根性」という意味にも使われるようになり、ガッツポーズでも明らかな様に日本語にも取り込まれています。

最近の研究で、気分の安定に大きく関与する神経伝達物質のセロトニンの約90パーセンントが腸で作られ、脳と腸がセロトニン系を介して密接な情報のやりとりをしていることが分かってきており「脳腸相関」と呼ばれています。脳腸相関の具体例として現代的なストレス疾患のIBS(過敏性腸症候群)があります(下図参照)。精神的に緊張すると下痢・腹痛が起こす症状を呈する場合が多いですが、下痢と便秘を交互に繰り返す混合型、便秘型もあります。

精神科の問診で現在の精神状態を把握するのに、食欲や睡眠と並んで「便通」を聴くことが多いのは精神状態をよく反映する為です。

内服薬は腸内細菌による分解を経て効果を示しますので、人によって違う「腸内フローラ」と呼ばれる腸内細菌のバランスで薬の効果が違ってくるという報告もあります。

精神状態の安定を目指す時に、いきなり精神安定剤で行くのではなく、急がば回れで下痢型IBSに効くイリボー錠の投与や便秘に効く薬の投与、漢方でお腹を現す「中」を建て直す薬である「建中湯類」を投与を行って消化器系のの安定を図ってから精神の安定へ向かうという治療的アプローチが有効な場合がよくあります。