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ネガティブ・ケイパビリティ

 車の移動中にふと聴いたNHKのラジオ放送で、偶然この「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を初めて知りました。「日本語に訳すのが難しい言葉ですが今の時代にはとても大事な言葉であると思う」と紹介された方が言われたので興味を持ちました。

 放送後しばらくして、気になっていたこの言葉について書いた箒木蓬生先生の著書「ネガティブ・ケイパビリティ 答えのない事態に耐える力を読みました。若くして結核で亡くなった19世紀英国の詩人キーツが家族への手紙に書いた言葉ですが、埋もれていたのを20世紀になり精神科医のビオンによって再発見されたとのことです。言葉の意味としては「問題を性急に措定せず、生半可な意味づけや知識で持って未解決な問題にせっかちに帳尻を合わせず、宙ぶらりんな状態を回避せず耐え抜く力」とのことです。ご興味がある方は同書をお読み下さい。

 今の社会は、長く続くコロナ禍に加えて、ウクライナ問題や頻発する地震被害など問題の解決法が見つからずない問題に満ちています。先の明るい見通しは全く立ちませんが、それでも耐えて未来を思い描くことが大事であるとこの言葉は教えてくれます。

 メンタルクリニックの現場でも、直ぐに解決できる患者さんの悩み事よりも直ぐに解決できな悩み事の方が多くどのように助言したら良いのか?悩んだり、最新の薬を持ってしても良くなる見通しが立たない方もおられ、私の方も困ることもあります。そういう場合も、「ネガティブ・ケイパビリティ」の精神で粘り強く患者さんと向き合って行く姿勢を決して忘れず日々の診療を行って行く所存であります。