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大きな船と小さな舟

 例えてみると、総合病院や単科精神病院は乗客である患者さんも船員であるスタッフも大勢いる大型船である。当院の様な小さなクリニックは船長である医師は一人、乗組員であるスタッフも最小限の小さな舟である。 

 大型船は入院も含めたフルサービスの安定感や信頼感あるが、組織が大きいと小回りが利かない短所もある。初診予約や入院も直ぐに受けて貰えないこともよくある。一方、当院のような弱小クリニックは、小さいがゆえに融通が利き、素早く初診を受けられたり、大病院に比べて患者さんと医師やスタッフとの距離が近いのでより親近感が持てる点が長所であると思います。短所は、心理士もいないので心理検査もカウンセリングも出来ないこと、ケースワーカーもいないので就労支援などの援助も出来こと、総合病院の様に身体疾患と平行した精神科治療が出来ないこと、MRIなどの検査機器がないので器質的なチエックも出来ないことなど「無いない尽くし」でもあります。

 クリニックをやっていて一番残念なことは、当院の緩さに慣れた患者さんが急に入院が必要となった時に説得しても、いきなり行動制限がかかる精神科閉鎖病棟への入院に応じてくれなかったり、紹介しても精神病院で上手く受けて貰えずミスマッチに終り機会を逃してしまうことです。

 やはり、医療機関は患者さんの症状の程度により、合った器があると思います。例えば、カウンセリング希望の方は最初からカウンセラーがおられる医療機関へ、希死念慮があり場合によっては入院が必要な人は、最初からベッドを持つ精神科病院へ通われることをお勧めします。